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​翁通信 Okina communication

世界と比較した日本の経済や社会指標は軒並み低下し、
経済成長を支えた日本の構造は根底から歪み始めています。

その再生には確実な情報に基づいた、

建設的な議論が不可欠です。

「翁」の視点で綴る「翁通信」にお付き合いいただければ幸いです。

​「翁通信」最初の報告は精神病院の患者が演劇に挑戦する小説と、その舞台を記録した映像の上映会のお知らせです。

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​僕が20代の頃、東京近郊のある精神科病院で看護助手をしていた経験があります。
​その病院で患者たちの劇団の世話をして、千葉市の劇場でおそらく世界でも例のない公演を行いました。
その時のことをモデルに胸の奥に沈んでいる記憶を手繰り寄せ、何とか小説にしました。もちろんその記憶らしきものを随分、身勝手なものに変色させたり、ファンタジーの世界に浮遊させたりしています。
だから記憶ではなくあくまでもフィクションです。
でも、この話のモデルは半世紀前に現実にあったことです。
​是非、一読していただけたら嬉しく思う次第です。 高野 達也  

            上映会
狂気によって演じられた正常・・・
​    
によって演じられた狂気の祭り

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「もう一人のアリス」の一場面

小説「アリス・イン・ドリーム」と上映会の関係

 この小説のモデルになっている劇団「青い舟」は昭和50年代(1975年~)千葉県船橋市にある同和会千葉病院という精神病院の中に患者の娯楽の一環として実際にあったものです。

一般客の前での公演はある患者の「街の劇場でやってみたいなあー」という一言から始まりました。

50年近く前の1976年「夜あるいはなにものかへの註」1977年「もう一人のアリス」1979年「水色の船の歌」が千葉県文化会館で一般市民を観客として公演されました。

精神病院に入院中の患者が演じる演劇が、一般市民の前で公演をするというのは前代未聞のことでした。

この公演が実現した背景には「精神病院から鉄格子を失くそう」という、当時動き始めていた精神病院の近代化=(患者の人権尊重)という動きがありました。

確かに、精神病院の近代化が進みはしました。その一方、家族に、病院に、そして自治体にも見放された重度の精神病患者の実態は今も変わっていません。

そうした患者を入院させる「貧困ビジネス」が蔓延り、監禁、院内暴力は日常で、薬漬け、過剰検査(患者の多くは生活保護者で医療費は公費から)で、病院経営者や病院医院長が年収一億を超える暴利を貪る病院が今も存在します。

これが一つの一側面です。もう一つの側面は・・・

1980年代に新世代抗うつ剤が開発され、世界中で人気を呼び、日本に入ってから精神病の薬の売り上げは十数倍になっています。街には精神科や心療内科を標榜する診療所(クリニック)の数が増加し、医師免許を持った医師が精神科の医師になっています。

要するに殆ど診察や治療をするのではなく、簡単なチェックリストに答えさせるだけで処方箋を出す医師の増加です。もちろんまじめで、良心的な医者もいますが・・・

むろんこの背景には医療問題だけではなく、社会の複雑化(競争社会、自己責任社会・・・)の中で、ストレスが増加したという面も見逃せません。

もう一つの側面は神戸大震災や東北大震災(その他もありますが)の時に叫ばれるのが、被災者の「心のケア」という大義名分です。ボランティアで精神科医(これも公費)が派遣されるのですが、被災者には、個々、異なった事情や悩みがあるはずなのに、被災者ということで一括りの対応(精神安定剤の投与)がなされています。この「心のケア」というのは曲者で、有名芸能人の自殺などに対し、きわめて安易に「心の問題」として、マスコミは報道し、社会も納得・同調しています。

秋葉原で起こった事件や神奈川の障害者施設で起こった事件、あるいは安倍元総理事件の犯人には検察、弁護側双方の精神鑑定が行われますが、精神異常(心神喪失)に判定されれば、罪に問えません。

結果「人格障害」「人格異常」と呼ばれることが多いのですが、「人格障害」「人格異常」と「精神病」は同じなのか否か?これは精神医学会でも、結論の出ていない問題です。

僕が嫌な感じを抱くのは「人格・・・」は、かつての赤狩りや、思想チェックと同じではないかという点ですが、穿った見方でしょうか?

これは精神医療の問題だけではなく、多くの社会の側面、強いては社会の流れそのもののように、僕には見えるのですが・・・

 

今回の上映会は、この活動の全体像をお知らせしたく、上記3作の記録映像を編集したものです。

演劇の作・演出は当時この病院に看護助手として勤務していた高野達也氏で、この小説「アリス・イン・ドリーム」の著者です。

小説は高野氏の体験がモチーフになっており、二作目の「もう一人のアリス」を中心に稽古から公演までを構成したフィクションです。

50年前に精神病院の入院患者自らが「ただ、普通に暮らしたいだけなの」と、

一般大衆の前で演じた精神病院に入院中の患者たちの演劇公演を、

今、振り返ることは、混迷するこの時代だからこそ意義があるのではないかと考える次第です。

      製作者:千秋 健

―参考(当時の反応の一部)―

映画を観た劇作家・寺山修司は「患者が患者を演じるという虚構性にショックを受けた」と語り、映画監督・伊丹十三は「この物語を映画にしたい」と評した。

民俗学者の赤坂憲雄は「宝島」誌の特集「精神病とは何か」で長編の「もうひとりのアリス」論を発表した。

そのほか「読書新聞」「キネマ旬報」など各誌で劇評や映画評が紹介された。

少し長くなるが「読書新聞」で山崎昌夫氏の映画批評文を抜粋する。

・・・病院の運動会の仮装行列の予行練習。つまり<患者>が<役>としての<患者>を演ずる。舞台の<役>と仮装行列の<役>とが問い合い、挑発し合う渦中に「アリス」に扮すべき少女の<患者>が投げ込まれる。彼女は三人姉妹、キリスト、天皇夫妻、オデュッセイアを口ずさむ船乗り、弱気なヒットラー、“中原中也”にびしょ濡れの医師、看護婦・高石かつ枝、シンデレラ風の少女、番場の忠太郎、メルヘルを兼ねたノラなどに扮装した<患者>に囲まれるが、少女は「アリス」と<自己>との次元の落差、境界を区別できない。このいたいけな<患者>は<役>としての<患者>、<役>としての「アリス」、<役>としての<自己>、<患者>である<自己>などが並立し、混乱していく・・・・・・

■ 会場
  シネマハウス大塚


■ 日時
​  
 9月10日(日)15:00~
   9月11日(月)19:00~
   9月12日(火)19:00~

​■ 入場料:¥2.000

■ 予約
  
 HPのヘッダにある「予約・問い合わせ」から
    申し込んで
ださい。

■ DVDの販売
  
演劇出演者の肖像権厳守のためWebでの公開は一切行っ
   ていません。
​   地方在住の方、グループで映像をご覧になりたい方には
   DVDを販売しています。(¥4.000)

 

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■  問い合わせ     
上映会に関する問い合わせはメールにてお願いします。  
Mail: t.senshu@outlook.jp      携帯: 090-3478-2601 (せんしゅう

​          

​予約状況

2023.09.10現在

  

9月10日(日)15:00~ 空席有 

9月11日(月)19:00~ 空席有

9月12日(火)19:00~ 空席有

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